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国民年金保険料「学生納付特例」とは

新年度がスタートし、新一年生が誕生して華やかになる季節ではありますが、余談の許さない状況下ではなかなかそうもいかないことも多いことでしょう。歓迎会やお花見などは自粛しなければいけませんが、華々しい門出は心からお祝いしたいですね。

新一年生の中には、大学生や専門学校など進学される方も多く、学費や生活費などの捻出に親御さんも苦労する時期でもあります。これが20歳になると年金手帳が送られてきますが、本人の名前で届くため親も感知せずについ放置してしまいがちなのが「年金保険料」です。今月は、20歳になって年金保険料の案内が来たときに納めることができない場合の対応について考えてまいります。

 

学生本人が申請することにより、年金保険料の納付が猶予される制度が「学生納付特例」制度です。免除ではなく、あくまで猶予です。ここで、保険料に関する言葉の定義を確認しておきましょう。

・免除:申請を行うことにより、保険料を納めなくても年金額が一定割合保障される

・猶予:申請を行うことにより、年金の資格を確認する期間には含まれるが、年金額には反映されない

・未納:個人の意思により保険料を納めないため、年金の資格期間にも年金額にも反映されない

この解釈を間違えてしまうと、納められない理由によって将来受け取る年金に影響が出てしまうことになります。

学生納付特例のメリットは、老齢年金の受給に必要な資格を確認する期間に算入されることと、病気やケガなどで障害が残った場合に障害年金を受け取るとることができるなどとなっていますので、納めることができない場合は、早めに申請することが必要になります。

また、この申請には一定の収入制限があります。前年の所得が128万円と38万円の基礎控除分を足した額以下であれば申請が可能です。もし、学生で扶養親族がいる場合などは、38万円の人数分が加算されることになりますので、対象の方はご確認ください。

そして、一番忘れがちなことは、猶予を受ける場合は毎年年度ごとに申請を行うことが必要であるということです。20歳になった際に申請を行い、その後一回申請をしたことで忘れてしまうことがありますので注意しましょう。忘れてしまった場合でも、申請時点の2年1ヶ月前まで遡って申請することができますので、もし期間が経過してしまっていた場合でも上記の期間は申請が可能となります。申請を行わないことで、申請日前に生じた病気やケガなどで障害が残った場合に給付が受けられなくなってしまいますので、忘れずに申請を行うようにしたいものです。

 

学生納付特例は猶予制度ですので、猶予された期間について後から保険料を納めることができる「追納」制度もあります。学校を卒業してお給料が入り、少しでも余裕ができたときに過去の分を納めることができます。ただし、これには10年間という期間制限がありますのでご注意ください。

仮に、就職して8年目になって過去の分を納める場合、約2年分とすると38万円程度になると仮定します。免除を受けた期間の翌年度から起算して3年目以降に追納すると一定の加算額がありますが、それでも38万円を納めることで、年末調整時には社会保険料控除となって返ってきますので、その年の所得税などが安くなることも想定できます。

このように、学生納付特例は一時的な保険料負担を軽減させてくれて、その上で年金の基礎期間に入れてくれる、なおかつ追納することで将来の年金額が作ることができ、税金対策にも役立つという図式も可能になります。ぜひ、20歳になる方がいらっしゃる場合は全体を含めたアドバイスを行ってみてはいかがでしょうか。

 

また、お子さんの保険料を親御さんが納めることも可能です。これは猶予ではなく納付になりますので、万が一のことがあっても保証が受けられることになることと、納めた親御さんは社会保険料控除が全額受けられますので、税務対策としても有効になります。学生本人に任せておくと、つい申請を忘れてしまったり、納付を忘れてしまったりということがありますので、親御さんが納付管理することでリスクの軽減にも役立ちます。

ただ一方で、コロナ禍においては職を失う方も多くなってきています。そう言った場合は、学生納付特例に加えて、親の「全額免除」と「一部免除」制度を活用いただき、アフターコロナで新たな仕事をスタートし、余裕ができたときにはぜひ追納を行っていただき、家族の将来設計を再度リストラクチャリングしていただきたいと考えます。

 

若い方の中には将来の年金には興味がない、どうせもらえないでしょうくらいの考えの方も多いことと思います。しかし、年金は歳をとってからもらうだけではないことを含めた年金制度をきちんと理解していただく必要があります。理解しないのではなく、理解しようとしない世代を救うのも先輩たちの役目です。未来をつなぐためにも適切にサポートしてまいりましょう。