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料理配達員の労災にご注意

新型コロナワクチンの接種が高齢者から始まり、少しずつ動き出してきました。若年層が実際に接種できるのはまだ先になりそうですが、その頃には副反応対策や接種後の体調管理など、いろんな対策が実行されているのではないかと考えるところです。
さて今月は、最近増加傾向にある業種と、兼業・副業における労災に関する事項についてまとめてみます。働き方が増えていく中で、法律が追いついていないことが多々あるのですが、世論が後押しすることで変わることもあります。身近にある内容としてもお考えください。

 

コロナ禍で増加した業種の一つに「料理配達員」があげられます。大きなデリバリーバッグを背負って自転車を漕ぐ姿は日常の風景になりました。しかし、彼らには守られるものが少なかったことが懸念されていました。自転車は車道を走ることが原則ですが、自動車との接近による接触事故や、道がわからないために迷走して事故を起こすなど、常に危険がついて回る状態です。その増加を踏まえて、厚生労働省の諮問機関でもある労働政策審議会は、料理配達員にも「労災の特別加入」を認める動きを示しています。
労災制度は、本来事業主に雇用されて働く人が仕事中に負ったケガなどを救済する制度ですが、事業主や役員、また個人事業主には適用されないこととなっており、中小企業の代表者などで、一般の労働者と同様の仕事をすることが多い人には、特別加入制度として通常の労災保険とは別に適用する制度となっています。しかし、ここにきて料理配達員の事故や、フリーランスのITエンジニアなどの長時間労働による過度なストレスを受ける人たちが増えていることもあり、加入の対象となるよう検討しています。元々フリーランスで働く人たちは、時間や場所に縛られずに働くことができる自由度が重視されていましたが、ここ最近は依頼主からの対応に追われるあまり不自由度が増してきていることも事実のようで、これまで以上に不利益になる点を修正したい考えと思われます。

 

次に、国が兼業・副業を認める中で複数の事業所で働く人も増えてきました。以前もこの紙面でお伝えしておりましたが、これまでの労災の考え方は、業務中に被災した場合、その被災した事業場での労災が適用となり、仮に兼業・副業先で被災した場合、その受けている賃金によって給付額が決まるため不利益になってしまうことが指摘されていました。これが、昨年の9月に法改正があり、複数の事業場で働いていた場合、給付額を算出するにあたり該当する複数の事業場で受ける賃金を合算して給付額が決まることや、一つの事業場での業務上の負荷によって業務災害にならないとされた場合でも、複数の事業場の負荷を総合的に判断して複数業務要因災害にあたるかどうかで労災認定されることになりました。
前述した料理配達員で働く人の中には、平日は会社員、休日に配達員として働く人もいるかと思います。そういった場合、配達員の業務中にケガをしても低額の給付にならなくなったという安心感が増えました。
また、同じ日にA事業場からB事業場の副業先に移動する際に負ったケガは通勤災害となりますが、これはB事業場での通勤災害の処理となります。これまでとは異なった対応になってきますので、人事担当者に確認いただくとよいでしょう。
参考までに、本年4月より以下の業種の方も特別加入が可能となりましたのでご確認ください。
・ 芸能関係作業従事者・ アニメーション制作作業従事者・ 柔道整復師・ 創業支援等措置に基づき事業を行う方

 

ワクチン接種の話に戻りますが、ワクチン接種後に副反応などで体調不良になり、休まなければならなくなった場合の対応についてお問い合わせをいただくことも多くなってきました。この副反応によるお休みについての考え方ですが、厚生労働省によると、本来ワクチン接種は個人の意思に基づくものであるため、ワクチン接種が業務上の指示にはあたらないことから仮に健康被害が生じても労災の対象とはならないとしています(新型コロナウイルスに関するQ&Aより)。しかし、医療従事者は新型コロナウイルスへのばく露の機会が極めて多いこともあり、業務遂行に必要な行為であるとして、健康被害が生じた場合は労災の対象となり得るとしています。

ワクチンを接種した医療従事者のお話を聞くと、割と高い確率で2回目接種後の発熱や腕の痛みなどを経験されている方は多いと感じます。そうなると、接種した日、あるいは翌日以降の対応としては、事業主ごとに特別休暇などの対策を検討していただき福利厚生面での拡充をし始めているところが増えています。ある企業では、特別休暇に加えて、接種することに関して奨励金を出して接種する意識を向上するところや、大手飲料メーカーでは、正社員だけでなく、契約社員やパートタイマーまで対象範囲を広げて対応することを明示しています。

 

今後の接種後の対策についてはまちまちですが、副反応に対する不安を払拭するためにも安心して働ける環境づくりが必要と考えます。