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兼業・副業の注意点

コロナ禍2年目となり、緊急事態宣言が発動される中、年明けとともに従業員が濃厚接触者になってしまった、従業員の家族に陽性反応が出てしまったというご相談からスタートした仕事始めでした。新型コロナが身近に来ていると感じた瞬間でもありましたので、十分な注意がまだまだ必要ということです。

それとともに増えてきたご相談が「兼業・副業」についてです。業種によっては通常の業務ができなくなっているところも多く、普段の生活を取り戻すためには現状の仕事だけではやっていけないので、それをなんとかするために兼業や副業を行いたいという方が増えているようです。大手企業も副業を認める動きを示すなど、コロナ禍だけの影響ではなく兼業・副業は話題になってきましたが、改めて制度についての理解や、自身の健康面での課題も多くありますので、今回は兼業・副業についてまとめていきます。

 

兼業・副業に関するみなさまのイメージはどのようなものでしょうか。終業後に自宅で株のトレードを行ったり、趣味で制作したものをオンラインショップで展開したりといったように趣味の範囲内で行うのか、あるいは昨今の事情のように、収入源を補うためのものなのかさまざまであるといえます。

最近では自転車などを使ったフードデリバリー業務も盛んのようですが、労災の保証もないことで個人事業主としての扱いになることなどが問題視されており、休日に仕事をしたいと考えている方には事故やケガなどのリスクも高まります。自転車もそうですが、最近はオンラインでの発注が進み、宅配業者なども人材不足になり、それを副業で行う場合にも、疲れによる不注意や慣れない運転での注意力散漫なども気をつけなければなりません。本来は、メインでの仕事が優先であり支障が出るようなことがあってはいけないと思うのですが、経済状況の変化に伴い、自身の生活のためとはいえ無理をしすぎていないか、これくらいやらないといけないと考えていないか気になる点であります。

 

では、なぜ最近になって兼業・副業の話題が増えてきているのでしょうか。昨年は働き方改革2年目でしたが、その働き方改革の項目の一つに兼業・副業については提唱されており、国は第2の人生のためにも準備をしていきましょうとしています。しかし、兼業・副業を行うことでさらなる長時間労働になってしまう懸念や、健康面での負担などもあり、簡単に進めることができないものでもあります。

まず、兼業・副業を行う際には、企業がどのような定め方をしているかを確認する必要があります。これまでの場合、職務専念義務を果たして欲しいという考え方からか、多くの企業の就業規則では兼業・副業を認めないとする定めをしているところが多く、企業の許可なしではすぐに始めることはできないことが多いと感じます。

許可なくして兼業・副業を行なった結果として、過去の裁判例では労働時間以外の時間は個人が自由にできる時間であるため、兼業・副業を行ったからといって解雇は無効であるという判断もあれば、重要な機密事項を抱える方が、同業他社で兼業していたことは倫理上問題があるとして解雇は有効となった事例や、終業後のアルバイトで夜の接待を伴う飲食店で毎日何時間も働いていたケースで、深夜に及ぶ時間帯での兼業は余暇利用の域を超えるものであり、解雇した企業側も社会通念上の管理や、本人の職務専念義務についても支障をきたすとして解雇が有効とされる例もあります。見聞を広めるためなのか、余暇の楽しみなのか、いずれにしても働きすぎにならないような時間の組み方は重要といえます。

 

実際に兼業・副業が認められて働くことができた場合でも、フルタイムで働いている方は、一日8時間、一週40時間という労働時間の制限がありますので、それを超えて働く場合は労働時間の通算管理が求められます。長時間労働になって体調を崩してしまうことは本末転倒です。適度な時間を設定するように調整しましょう。

また以前の紙面でもお伝えしておりますが、兼業・副業で収入を得ることも目的とすると、働きすぎに加えて、公的保険や税務面でも注意をしなければなりません。公的保険や税務面では厳格な基準がありますので、年間20万円を超えるような収入の場合には確定申告を忘れずにしていただくなど、適正に税金を納めていただくことも忘れないようにしていただきたい点ですし、社会保険の扶養の範囲は130万円(60歳以上の方等は180万円)ですので、限度額を超えない働き方が必要になります。

 

このような制約があるにもかかわらず、いい面だけがクローズアップされていることに違和感を感じますし、実際に進んでいるところで、やっとガイドラインを示すなど対策の遅れも感じるところです。しかし、風潮に沿った考え方が求められていますので、コロナ禍による一時的なことではなく、さまざまな事情を考えた上で労働時間や健康面とうまく調整しながら進めていただきたいと願うところです。