ブログBlog

健康保険に関する改正があります(令和4年)

最近の公的保険に関する話題は、高齢化対策と少子化対策がメインになっています。この紙面でも繰り返しお伝えしておりますが、70歳雇用に向けた動きに伴い、厚生年金や雇用保険など公的保険の改正が続きます。お客さまの将来設計に大切なことですので、新しい情報を適切にキャッチして情報を提供してまいりましょう。

今回は、次世代または全世代に関係する健康保険法の改正についてまとめてみます。実際の施行は来年の令和4年1月からですが、これまで要望の多かった内容や制度を促進するためのものもありますので、ぜひご確認ください。

 

これまで年金については、世代間扶養といって現役世代が納める保険料で、その時点の高齢者に対し年金を給付する「賦課方式」で進んでおり、民間保険のように自身が積み立てた保険料で給付が受けられる「積立方式」ではないことはご承知のことと思います。この制度自体に問題があるけわけではないと考えていますが、今後の社会保障改革の議論の中で、現役世代の給付が少なく、高齢者中心になっていた構造を見直す動きがあり、全ての世代に対しての社会保障ということで議論が進んでいます。

今回、これらの議論の結果、以下の項目の改正が見込まれています。

1.全ての世代の安心を構築するための給付と負担の見直し

(1)後期高齢者医療における、窓口負担割合の見直し(令和4年10月1日から令和5年3月1日までの間において政令で定める日)

(2)傷病手当金の支給期間の通算化

(3)任意継続被保険者制度の見直し

2.子ども・子育て支援の拡充

(1)育児休業中の保険料の免除要件の見直し(令和4年10月)

(2)子どもにかかる国民健康保険料の均等割額の減額措置の導入

3.生涯現役で活躍できる社会づくりの推進(予防・健康づくりの強化)

・保健事業における健診情報等の活用促進(厚生労働省:全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要より抜粋)

 

この中で、1(2)の傷病手当金の期間通算化と、1(3)の任意継続被保険者制度の見直しについて詳しく解説していきます。

まず、傷病手当金の期間通算ですが、現状では傷病で休んでいた場合でも一旦病状の回復などにより職場復帰すると、復帰に伴って不支給となった期間は通算されることなく期間だけが過ぎていくことになっています。最近ではがん治療などで入退院を繰り返すことも多く、それらに対応する制度が望まれていましたので、「実際に支給を受けた期間を通算して1年6ヶ月」と改正する案となっています。今は、治療しながら仕事をする「ながらワーカー」も増えていることも考えての改正になりますので、安心して治療しながらお仕事ができる環境になっていきそうです。ちなみに、公務員などの共済組合では、既にこの制度が適用されているとのことです。

 

次に、任意継続被保険者制度の見直しについてです。こちらの元々の考え方は、協会けんぽや組合健保に加入していた方が退職した後の健康保険の選択肢が国民健康保険しかなかった時代に、前年所得により決定する国民健康保険料の負担が大きいことに鑑み、激変緩和措置の意味合いで制度が出来上がりました。また、窓口での負担割合も国民健康保険は3割ですが、組合健保などの加入者は1割だった時代背景もあり、当時の制度としてはとても意義のある制度でした。しかし、現在では窓口負担も同じになり、保険料の算定方法や時期についての違いなど、制度の見直しをする声が上がっていました。

保険料算定については、従前の標準報酬月額か、全被保険者の平均標準報酬月額のいずれか低い額とされていますが、健康保険組合などでは財務状況の悪化等も懸念されていることから、退職前に高額な報酬が支払われていた方にも相応の負担をいただくということから、従前の標準報酬による保険料の算定方式の案が出されたところです。

また、被験者期間は2年とされていますが、2年間という縛りが退職後の被保険者の選択の幅を制限しているという考え方から、期間を1年とし、被保険者からの任意の脱退も認めることが案として出されています。

これら二つの制度改正は、いつ誰に降り掛かるかわからないことに対して、全世代を通しての改正となり公的保険制度として大きく充実するのではないでしょうか。

2の子ども・子育て支援の拡充も、次世代育成に向けて大きなテーマです。特に、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合には当月の保険料を免除するとともに、賞与の保険料については1か月を超える休業に対して免除対象とするなどが盛り込まれています。

 

以上のような改正が進められていますが、詳細についてはこの1年間の内に決まってくると思われます。生活していく上で欠かせない公的保険制度ですが、なかなか理解できないことも多くあります。少しでも噛み砕いてお客さまに提供できるよう進めてまいります。