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育児休業法の改正概要

育児休業法が改正されました。今回はなんと言っても「男性版産休」などとも報じられており、男性の育児休業取得を促進することが目玉になっていますが、それ以外でもこれまでの概念と少しずつ異なる考え方になってきています。それにもかかわらず、いまだにマタニティハラスメントやパタニティハラスメントなどの話題にも事欠かない状況も垣間見えます。今回の法改正は、新しい時代の幕開けという表現すら時代遅れであると感じていただきながらご確認いただきたいと考えます。

 

さて、今回の改正によって初めて男性が育児休業を取得できると思われる方も少なからずいらっしゃるかもしれません。男性であっても女性であっても育児休業は権利として存在しており、法律で守られた休業制度です。しかし、浸透しない理由はどうしても育児休業は女性にしか存在しないという思い込みだったり、男のくせに育児休業なんてなどと言われたりすることが原因ではなかったでしょうか。育児休業法の中には、育児休業の申し出は一回だけであるが、子の出生から8週間までの期間内に育児休業をした場合のものは除くとなっており、これは「ほぼ男性の場合に限り、出生から8週間までは一回目の育児休業が取得できる」と読み替えることができ、母親の産後休業にあたる期間は2回目の育児休業が取得できることになっています。ここが今回クローズアップされて、男性の育児休業の義務化につながったといえます。

 

今回の育児休業法の改正項目について、時系列で確認しておきましょう。

・令和4年4月改正項目

「1年以上雇用されている」という要件が廃止されます。仕事をしていく中で、育児という時間は相対的にみて長くはありませんので、長期雇用の上での継続雇用という観点から、1年以上の雇用という縛りは概念に合わないとされ廃止されます。

次に、育児休業が取得しやすい職場環境の整備です。本人または配偶者が妊娠、出産したことを申し出た場合には、法制度を説明し、育児休業の意向を確認することとなります。また、その申し出が円滑に進むように研修や相談体制の整備なども定められます。その他の項目については、法施行までに示されるものとなっています。

・令和4年10月改正項目(期日は予想)

これまで育児休業は、該当の子に対して1回しか認められていませんでした。これが、夫婦ともに育児に参加するため、夫婦交代に取得するなども含めて分割して2回の取得ができるようになります。合わせて、1歳6ヶ月や2歳まで延長する育児休業も、これまでは1歳までが母親だった場合、延長する休業も母親しか取得できなかったものが、延長する休業は父親が取得できるなどフレキシブルな制度になってまいります。この部分だけを見ても、十分に緩和されてきていると感じます。

そして、今回の改正の注目ポイントが「出生時育休制度」です。女性の産後休業にあたる出生から8週間の期間が、出生時育休となり男性の育児休業を明確に分けた形となっています。この8週間の期間内に4週間以内の期間を定めて取得する休業が出生時育休となるわけです。ここでも特徴的なのが、2回に分けて取得できることです。2週間ずつを2回などというように、夫婦間での育休をうまく使い分けることで、新しい命を大切に育てる時間を大切にできるということです。

もう一つ特徴的なことは、通常の育児休業は取得の1ヶ月前までに申し出ることとなっていますが、出生時育休の場合は2週間までも可能とされたことです。さらに、申し出を忘れてしまった場合で、すぐにでも休みたいという時などは、事業主と話し合いをしていずれかの日を指定できるとされています。これは、現状の制度でもあることですが、改めて明記されているということになります。

 

また、これは新たな概念となりますが、育休中であっても働くことができることです。基本的には休業することが目的ではありますが、労使協定を締結し、事前にこの日は働けるという指定をした場合には働くことができるようになります。これまでも、育休期間中に働いた場合はその旨を申告することで育児休業給付金が減額されることになっていましたが、この点も明らかにしていこうとする考えです。少しでも仕事が気になる方にとっては効率的に仕事ができるようになるのかもしれません。

 

前述の育児休業法の改正に合わせて、雇用保険の育児休業給付金制度も改正されます。出生時育休が2週間を2回などに分割して取得できることをお伝えしました。これに合わせて分割した2回目の育児休業給付金にも「出生時育児休業給付金」が創設されます。金額的に変わるわけではなさそうですが、新たな制度としてご確認ください。

 

現在、公務員を中心に男性から育児休業取得の申し出があった場合、まず1ヶ月の取得を促進しており、今回法改正によって拡充されていく制度です。事業主や上司の方など、積極的に制度を理解していただき、次世代の育成について進めていただきたいと考えます。