今年、育児休業が大きな転換の年となります。これまで取りにくかった男性の育児休業が義務化されることが大きなポイントですが、それ以外でもさらに育児休業を取りやすくしようという動きがあります。少し前は、マタニティハラスメントも大きな話題となり、妊娠・出産を控えた方の大きな負担は軽減される方向になったものの、まだまだ育児休業のハードル自体は低くなりきっていないという点も考えられます。
今月は、4月の改正法を含めた育児休業の動きについてまとめてみます。
育児休業の取得率は、女性81.6%(前年:83.0%)男性12.65%(前年:7.5%)となっており、男性の育児休業の取得率が約5.2%も上昇したことがわかります(厚生労働省2020年度雇用均等基本調査より)。この紙面でも何度かお伝えしておりますが、公務員や一部のダイバーシティ的経営を進める企業で大きく制度を変更して改革した結果といえます。一部には、コロナ禍の影響で在宅での仕事も可能となり、うまく組み合わせた結果ととらえることもあるようですが、いずれにしてもこの10年間で比較すると男性の取得率は10%以上の上昇が見られます。
そんな中、有期雇用で働く方の取得率は低調で、女性62.5%(前年:77.5%)男性11.81%(前年:3.07%)という結果となっています(前述調査より)。このような結果を受けて、有期雇用の方の育児介護休業の取得の要件を緩和する動きになったのではないかと推測されています。
取得要件は法改正により緩和されたものの、最終的には労使協定というハードルがあるため、実質的に有期雇用の方で働いている期間が短い方にとっては変わらぬ壁となってしまうことも事実です。
実務上では、労使協定によって以下の方が除外されてしまうことになっています。
- 雇用された期間が1年未満の方
- 育児休業の申し出から起算して1年以内(要件によって1歳6ヶ月や2歳までの子の申し出をする場合は6ヶ月以内)に雇用関係が終了することが明らかな方
- 週の労働日数が2日以下の方
上記の労使協定は、有期雇用の方だけでなく無期雇用の方にも適用される場合がありますので、転職して間もない方が育児休業を取られる場合などは確認が必要になります。
また、上記の協定は除外できる方の最大限度とされており、今後男性の育児休業を進めていく中で「男性は対象から外す」などとすることはこの限度を超えることになりますので認められません。
また、労使協定で除外する方を定めることができたとしても、今後同一労働同一賃金の制度が進んでくることによって、パートタイム・有期雇用労働法などに抵触することも考えられ、育児休業などの待遇面において改善を求められることも想像できるところです。
このように、今回の改正が意図するところは、単に働いている期間の短さで制度が適用されないということよりも、その先を考えて対応していくことが求められるといえます。
国は有期雇用を減らし、正規雇用にすることで雇用の安定を図り、育児介護休業も要件を緩和する施策を取っていますので、働き方を今一度見直していただくことで、公的保険のメリットを享受していただくことが可能になります。
少子高齢化を少しでも食い止めるために、次世代の育成についても本気で向き合っていかないことには、将来支えてもらう私たちの世代も不安になってしまいます。
制度の改正によって複雑化する反面、大きなメリットと考えて進めていきたいものです。