新聞報道によりますと、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関する指針」の改定案を労働政策審議会に報告したとありました。国は、副業・兼業の促進について進めていますが、さらに拍車がかかる内容となりそうです。副業・兼業については様々な意見があり、促進派と否定派両方の意見が混在していますが、改定が進むことで副業・兼業が進み、求人などにも大きく影響が出てくるかもしれません。
今月は、副業・兼業から考えられる課題やリスクについて考えてみます。
前述した改定案は、企業に対し従業員の副業・兼業を認めているかどうかや、認めている場合の条件などをホームページに公表するように促すことなどが盛り込まれるとのことです。公表することで企業イメージが上がり、求人に対しての幅を持たせることも狙いの一つのようです。
ただ一方での意見としては、業務に対しての専念意識が薄れることを嫌い、導入に対して消極的な企業も多くあります。
国が示す副業・兼業イメージは、労働時間以外の時間は自由に使えるものであり、企業において制限されることは一定の条件下にある場合であるとしています。メリットとデメリットで言えば、メリットとして収入が増える、転職をしなくてもスキルや経験を得ることができる、自己実現ができるなど肯定的なことに対して、デメリットは就業時間が長くなる、健康管理の問題、秘密保持の流出などが挙げられ、副業・兼業を行うことでさらなる長時間労働になってしまう懸念や、健康面での負担などもあり、簡単に進めることができないものでもあり一長一短といえます。
副業・兼業を行う際には、企業がどのような定め方をしているかを確認する必要があります。これまでの場合、職務専念義務を果たして欲しいという考え方からか、多くの企業の就業規則では副業・兼業を認めないとする定めをしているところが多く、企業の許可なしではすぐに始めることはできないことが多いと感じます。
ですが、前述の指針の改正によってさらに進むことも予想されるところです。
懸念事項ばかり申し上げましたが、副業・兼業を進める上でのプラスの考え方についても考えてみます。
これまで趣味であったり流行りであったりと、いろんな副業・兼業がありますが、時間をうまく使うことで効果的なものもあります。最近では、週休3日制度を採用する企業もあり、時間を有効活用するなどの幅を持たせる企業も増えたことや、在宅勤務が増えたことで通勤時間がなくなりその時間を有効活用するケースも増えています。
副業・兼業が増えたことで、労災に関する改正も安心して働けることにつながっているとも考えることができます。以前この紙面でもお伝えしていますが、副業・兼業の労災の考え方は、業務中に被災した場合、その被災した事業場での労災が適用となり、仮に副業・兼業先で被災した場合、その受けている賃金によって給付額が決まるため不利益になってしまうことが指摘されていました。これが、2020年の9月に法改正があり、複数の事業場で働いていた場合、給付額を算出するにあたり該当する複数の事業場で受ける賃金を合算して給付額が決まることや、一つの事業場での業務上の負荷によって業務災害にならないとされた場合でも、複数の事業場の負荷を総合的に判断して複数業務要因災害にあたるかどうかで労災認定されることになり、前向きな改正項目となったのも大きな話題となりました。
副業・兼業は半数の企業で採用されているものの、まだ否定的な考え方も多く残っています。収入増だけでなく、新たなスキルや考え方を創造する働き方を考えていく時代になってきたということかもしれません。
とはいえ、働きすぎない働き方をすることが前提であることは確かです。